5つの法則:自己規律

著者: ピーター・アムステルダム

10月 25, 2015

October 20, 2015

ビデオ所要時間: 17:50

ビデオ・ダウンロード: High (109MB) Low (63MB)

オーディオ所要時間: 17:55

オーディオ・ダウンロード(英語) (16.4MB)

(ビデオやオーディオをパソコンにダウンロードするには、リンクを右クリックして、「リンク先を別名で保存」等を選択してください。)


「なまけ者の心は、願い求めても、何も得ない、しかし勤め働く者の心は豊かに満たされる。」 [1]

今日は、しばしば捕らえにくくもなりうる資質、自己規律について話そうと思います。自己規律とは、「為すべきことを自分に強いること」です。私たちのほとんどは、より自己規律のなされた人生を送りたいと思っています。なぜなら、それは有意義な人生を送るには極めて重要なことだと知っているからなのですが、皮肉なことに、この良き習慣を身につけるにもある程度の自己規律が必要です。

最初に少し良い知らせがあります。自己規律は身につけるスキルだということです。自己規律は筋肉です。鍛えれば鍛えるほど、増えていきます。ですから、あなたが特に自己規律を身につけていないタイプだとしても、安心してください。今から自己規律という面で成長できるのです。

では、なぜ自己規律が必要なのでしょう。どんな益があるのでしょう。ただ楽しいから自己規律を守りたいのではありません。なぜなら、率直に言って、自己規律はそれほど楽しくないからです。私たちは進歩向上したいから自己規律を望み、また必要とします。きっとあなたにも、何か成し遂げたいこと、達成したいことのビジョンがあると思います。おそらく、ビジョンを実現させるために達すべきゴールのリストがあるのではないでしょうか。そして、皆知っているように、自己規律が取れた人は成功者である場合が多いです。自分の時間や焦点をコントロールするのにいつも苦労している人たちより、はるかに頻繁に、そして素早く自分の目指していることを達成します。

他にも、自己規律を守ることはあなた個人に益をもたらします。自己規律を守るなら自信が増し、ゴール達成の助けになり、達成感を得られ、自分はベストを尽くしていると知ることができます。また、人格の形成にもなり、結果的に自分にとって大切なことのための時間がもっとできるようになります。

あなたは祈りの生活を改善させる必要性や、他にも朝の日課を習慣づける、定期的に瞑想をする、子どもともっと質の高い時間を過ごす、結婚生活に力を注ぐ、ジャンクフードをやめる、定期的に運動する、自己開発講座や教育講座を完了させる、あるいはことによるとテレビやゲームの時間を減らす、早寝をする、ソーシャルメディアを制限するなど、毎日の生活に関わる様々な事柄を改善させる必要性があると思っているかもしれません。しっかりとした自己規律を守ることは、私たち誰もが必要とすることではないでしょうか。

では、自己規律に関する5つの実際的ポイントを見ていきましょう。

ナンバー1. 楽しみはあとで。

あるいは、別の言い方をするなら、「より良い」結果のために最後まで耐え抜く気があるということです。1960年後半に行われた有名な「マシュマロ実験」のことは、聞いたことがあるかもしれません。4歳児のグループにそれぞれマシュマロ1個を与え、すぐに食べてもいいし、あるいは15分待てば2個もらえると告げます。7割の子どもは1分も経たないうちにあきらめてしまいました。3割の子どもだけが、2つもらえるまで我慢できたのです。のちに、同じ子どもたちが10代後半になった時に彼らを調べると、4歳の時に楽しみをあとまでとっておくことのできた子どもはいずれも、他の子どもよりも良い評価点を出しました。論文にはこうあります。

その違いは目を見張るものでした。4歳の時に、衝動を抑え、楽しみをあとにとっておくことのできた子どもは、ティーンになっても社会的にも個人としてもより有能でした。自分の意見をはっきりと伝える能力や、自信、信用性、信頼性のレベルもより高く、ストレスをコントロールする能力も優れていました。驚くことに、大学進学適性試験(SAT)のスコアは、「すぐに楽しみたい」グループよりも210ポイント高かったのです。[2]

この研究は、最初にまたは代わりにやるべきもっと大切なことがあるので、今やりたいことや今楽しみたいことを意識的に後回しにするのを選ぶことの価値を表しています。これは、毎日の決断をする上で、念頭に置いておくべき重要な原則です。ありがたいことに、この資質は伸ばすことができます。意識的に選択すればよいのです。

「楽しみはあとで」を実践するには、それよりも大きなビジョンが必要です。長期的な何かに目を留めていなければなりません。今だけを見るのではないのです。夢に達するには、計画、ゴール、踏むべき行動のステップが必要です。ビジョンを実現させたいという願いがあれば、今何かを拒んででも、あとで得られるより良いものを選ぶことができます。当然のこと、今のことだけを考えて、明日は明日という生き方は、誰にとっても簡単だし、自然なことです。すぐに楽しめるものを諦めて、将来に投資するには、自己規律が必要です。[3] ある人がそれをこのような言葉でうまく表現しています。「自己規律とは耕作することです。今日の行動を明日の結果につなげなければなりません。」[4]

自己規律の本質は、犠牲です。楽でもないし、楽しくもありませんが、効果はあり、必要なものなのです。

ナンバー2. 意志力ではなく、習慣を頼りにする。

「意志力というものは、本質的に、長期ゴールを満たすために短期的な誘惑に抵抗する能力です。」[5] たとえば、難しい選択や状況を切り抜けるために意志力を発揮するとします。それはケーキを食べるのを我慢するとか、ジムに行く気を奮い立たせるとか、気の重い重要な仕事に取り掛かるとかいったことかもしれません。意志力がどっとほとばしれば、難関は切り抜けられるかもしれませんが、意志力というものは限りあるリソースで、枯渇することもあります。そのように、意志力というのは、その効果に限度があるので、100%頼りになるリソースではありません。自己規律こそ、進歩に必要とされる、毎日しっかりやり遂げる一貫性をもたらしてくれます。自己規律を守っていると、毎日毎日進み続け、頑張り続けることができます。そんな気分でないときでも、いやむしろ、そんな気分でないときにこそ、そうさせてくれるのです。自己規律とは、何度もなんども繰り返し意識的な選択を行うことです。

トマス・ハクスリーは、成功の秘密を簡潔に言い表しました。「やるべきことをやりなさい。たとえやる気がなくても、やるべき時に。」 成功の法則は何千何百とあるし、この主題については数え切れないほどの本が出ていますが、50年以上も成功について研究した人物が、賢明にもこう語っています。「自己規律がなくては、[その他の成功の法則の]どれ一つとしてうまくいかない。」[7]

ジム・クレマーはこのように述べました。「成功者と、やっとのことで生きていく人との大きな違いとは、自己規律です。孔子はこのように書きました。『性(せい)相(あい)近きなり。習(ならい)相(あい)遠きなり。』(人の生まれつきの性質はだいたい同じだが、習慣によって大きく違ってくる) 成功者は、たいていの人がやりたがらないことをやる習慣がついています。」[8]

では、自己規律を最大に生かすための方法を見てみましょう。それは良い習慣をつけることに関係しています。

習慣は、自己規律の基盤です。数多くの小さな習慣が何度も何度も繰り返されることで、あなたの人格や、成功のレベル、霊的健康、評判など、ほとんどすべてのことが定まってきます。習慣は私たち一人ひとりの生活において強い影響力を持っているのに、往々にして、私たちは、自分がつけた習慣のことを考える時間を十分取りません。それは役に立っているでしょうか。それは私たちの望む方向に私たちを動かしているでしょうか。

おそらく、一つの習慣が身につくには21日かかるという言葉を聞いたことがあると思います。ところが最近の研究によると、ほとんどの習慣は、身につくのに66日ほどかかると言われています。ごぞんじのように、習慣づけるには、集中力、思考、努力が必要です。しかし、いったん習慣になれば、楽に、ほとんど自然にできるようになり、いずれはすっかり習慣づいて第二の天性になります。考えもせずに、ただやるようになるのです。そして、そこに秘訣があります。自己規律を守るという決意の助けになり、それをサポートする習慣を意図的に築かなければなりません。そして、ゴールに向かって一貫して自己規律を実践していくと、いずれ、あなたにとって大切なことがもっとうまくいくようになります。

簡潔に言うと、専門家は、限りある意志力を、習慣をつけるためのプロセスに使うよう勧めています。たとえば66日間毎日何かをするといったようにして、習慣をつけていくには、ある程度の努力が必要です。しかしそのあとは、その行動の「習慣」が優位になって、ほとんど自動的にその行動をするようになります。すると、私たちの意志力や努力はそれほど必要なくなります。一番肝心なのは、何を習慣づけるかを選ぶことです。なぜなら、自分で気づいていようがいまいが、私たちはすでにたくさんの習慣がついているからです。その中には良いものもあれば、悪いものもあります。自動的にゴールに向かわせる良い習慣をつけるなら、本質的に、自分の人生に自己規律という資質を取り入れたことになります。そして、それを何度も繰り返せばいいのです。

たとえば、一定の期間内に、本を書きたい、あるいは教育講座を修了したい、何かの楽器を弾けるようになりたいなどのビジョンがあるとします。ゴールに向けて新たにどんな習慣を身に付けたいのか、意識的に計画することができます。たとえば本を書くことを例にとると、1年以内に本を書き終えたいとしましょう。自分を最終ゴールに向かわせるのに最も効果的な習慣とは、本を書き進めるために何があっても毎日30分早く起きることだと決めました。そこで意志力をふりしぼって、毎日30分早く起きて執筆をはじめます。このように早く起きて30分間執筆するという一つの新しいゴールを毎日実行すると、いずれこの新しい習慣が身について、最終の大きなゴールに達せるようになるでしょう。習慣をつける行動を66日間続け、その理由を忘れずにいるなら、早起きするという習慣が身について、本を書くために筆を執るのが、あるいはキーボードに指を置くのが、次第に容易になっていくでしょう。そして、いったん習慣の力学が作動して、調子が出て来れば、今度は意志力を別のゴールに向けることができます。ジム・ローンは賢明にもこのように言いました。「自己規律とは、ゴールと達成とをつなぐ架け橋である。」 この概念は、あなたが達したいと思うどんなゴールにも当てはめることができます。

アリストテレスは、人の習慣と優秀さとを明確に関連付け、このように言いました。「我々は自分が繰り返し行う行動に等しい人物となる。であるから、優秀さとは行動ではなく、習慣なのである。」

習慣、習慣づける、習慣を断つ、すでにある習慣を新しい習慣につなげるというのは、興味をそそられる主題です。もし興味があれば、この主題について、チャールズ・デュヒッグが書いた、『習慣の力 The Power of Habit』という良い本があります。[9]

ナンバー3. 自分の「理由」を知る。

自己規律の筋肉を鍛えるには、幾らかの犠牲を要するし、さらには何かのアクティビティーをやめたり、それを新しいアクティビティーに替えるという、自分にとって不快なことをする必要もあります。これらの変化を最後までやり通そうという意欲が必要になります。自分の「理由」を知らなければなりません。自己規律を強める上で働きかけているものは、犠牲にしているものよりも、もっと価値があるものでなければなりません。なぜ自分はそれをしているのかを知らなければならないのです。その理由は何なのか。あるいは、他の言い方をすれば、達成しようとしている目標やねらいは何なのか。かなえようとしている夢やビジョンは何なのか。

あなたの「理由」は、あなた個人の願いと信念、そして神があなたをどう導いておられるかに起因しているべきです。これはあなたと神との間の、個人的な事柄です。あなたの理由は、罪悪感や、他の人から何を期待されていると思うかに基づいてはいけません。あなたの理由は、あなたを導く星のようなものです。あなたが頼りにしていくものです。それはあなたを動機付け、良い習慣を築くのを助け、最終ゴールに達するための、時として長い旅路を行く時の犠牲に、苦労しながら取り組んでいくのを助けるので、自分の理由を極めて明確に知っておくことは、非常に重要です。あなたの理由を常に自分の前に掲げておきなさい。それはあなたに強さを与え、生まれながらの強さや意欲が衰えた時でも、進み続けるのを助けてくれるでしょう。

ナンバー4. 漸進的な進歩を遂げるためのゴールを定める。

大きなゴールに向けて働きかけている時には、一度ジャンプしただけでそこに行くことはできません。ゴールに達するには、何ヶ月も、時には何年もかかることがあります。長期ゴールに向けて働きかけている時、良きわざを行うのにうみ疲れてしまうのは、ごく自然なことです。軌道から外れず、勇気を持ち続けるには、毎日、毎週、毎月ごとに遂げるべき進歩を決めることが効果的です。毎日達成できるぐらい小さくて明確な、目下のゴールが必要です。その一つ一つが積み重なって、来月、この先3ヶ月あるいは6ヶ月、あるいは来年になった時にあなたが望むような状況につながる計画が必要なのです。あなたは漸進的な進歩を計画し、認識し、測れるようにならなければなりません。

大きなゴールにコツコツ取り組んでいる時には、小さなゴールを現実的に捉えることが大切です。達成できないゴールを設定しても何にもなりません。終いに落胆し、もうすぐにあきらめたほうがいいと思うだけでしょう。手に負える以上のものを負ってはいけません。そうではなく、あなたを大きなゴール達成に少しずつ近づけている数多くの小さなステップを表す達成可能なゴールを定めることで、成功に向けて自分を備えましょう。

一貫性、規則性、忠実さに焦点を合わせるのです。ここそこで少しずつ何かをしているだけでは、ゴール達成は期待できません。小さなことを一貫してやり続けることが、強い習慣を築くのであって、それがあなたに大いに役立つのです。小さなステップを過小評価してはいけません。漸進的な成長には力があります。一貫して小さなステップを踏み続けていけば、時とともに大きな変化を遂げることができるのです。

ナンバー5. 報告責任のシステムを作る。

毎日の生活で、私たちをゴール達成の軌道からそれさせ、脱線させようとする出来事がたくさん起こります。ゴールを定めてそれに向けて働きかけたけれども、数週間後に、「あれ、あのゴールはどうなったんだろう。ここ一週間、そのことをすっかり忘れていたし、何もしていない」といった経験が、誰にでもあると思います。病気になったのかもしれないし、来客があったとか、出張に出ていた、あるいは子どもが病気になって看病していたということかもしれません。そういった、ゴール達成を妨害するものは数知れなくあります。

あなたを何度も繰り返しゴールの方角に向けてくれる、何らかのシステムを作ることが極めて重要です。たとえば、ゴールを毎日見直したり、毎朝書き留める人がいます。また、週に一度、一緒にコーヒーを飲んだり電話で連絡を取って進歩状況を知らせる、報告責任のパートナーがいるという人もいます。また、ウェブサイトに自分のコミットメントや進歩を投稿するという人たちもいます。そして、同じようなゴール達成を目指している他の人たちがそれを見たり、互いに励ましあったりするのです。

自分の進歩のあとをたどるなら、改善したい面がその時々でどのような状態になっているのかを認識できるようになります。進歩を測定して初めて、何かを管理したり改善したりできます。進歩をたどることは、軌道にとどまり、軌道に戻ることの鍵です。[10]

研究によると、誰かに自分のゴールやコミットメントを告げると、それを貫く可能性が高くなることがわかっています。報告責任は成功の可能性を高めます。ですから、何かのために時間をかけ、それに向けて努力しようと思っているなら、自分に報告責任を課すための、簡単で効果のある方法を考え出すことによって、成功を確実にしてはどうでしょう。

報告責任のシステムは、意図に勝ります。システムがなければ、おのずと道からそれる結果になるでしょう。毎日自分に報告責任を課すことで、自分自身と、神が与えてくださったゴールとがそれないように守るならば、「もしそうしていたなら」という嘆きを避けることができます。

では、5つのポイントを簡単に復習しましょう。

1. 楽しみはあとで。

2. 意志力ではなく、習慣を頼りにする。

3. 自分の「理由」を知る。

4. 漸進的な進歩を遂げるためのゴールを定める。

5. 報告責任のシステムを作る。

これらの実際的な助言以外にも、私たちクリスチャンには神の力という、天の力の源があります。箴言16:9にはこう書いてあります。「人は心に自分の道を考え計る、しかし、その歩みを導く者は主である。」 計画は私たちがしても、主がその歩みを導いて下さらなければなりません。祈りによって夢や計画やゴールを神の御もとに携え、あなたが選んだ道について神の導きと確証をもとめるなら、あなたはゴールに向けて努力する上で、神の力と恵みを頼みとすることができます。信者として私たちには、神とその際限のない力に頼れるという素晴らしい強みがあります。それによって、自分の決意したことを成し遂げるのを直接助けていただけるのです。私たちは、権勢や能力に頼らなくとも、神の霊に頼ることができます。[11] そして、それが大きな違いをもたらすのです。


1 箴言 13:4.

2 Jim Clemmer, Growing the Distance: Timeless Principles for Personal, Career, and Family Success (The Clemmer Group, 1999), 97.

3 Ibid., 98.

4 Gary Ryan Blair.

5What You Need to Know About Willpower,” American Psychological Association.

6 Jillian Teta, “Mind-Body 101: 6 Key Concepts,” June 1, 2012.

7 Brian Tracy, The Power of Discipline: 7 Ways It Can Change Your Life (Simple Truths, 2009), 6–7.

8 Clemmer, Growing the Distance, 102.

9 New York: Random House, 2014. [邦訳版は講談社より発行]

10 Darren Hardy, “Tracking Progress,” DarrenDaily, December 5, 2014

11 ゼカリヤ 4:6.

Copyright © 2024 The Family International. 個人情報保護方針 クッキー利用方針