ライフバランスチェック(パート3):運動

著者: ピーター・アムステルダム

9月 24, 2019

[Life Balance Check, Part 3: Exercise]

September 24, 2019

運動について書きたいと思います。これは目新しい話題ではなく、ここ数十年、かなり多くの情報が飛び交い、私たちも過去の記事や出版物で扱ってきました。けれども最近、同労者の一人が運動について調べていて、いくつか私にも助けになったものがあります。それは運動に関する新たな洞察を与え、確信を強めてくれました。そこで、その中からいくつかの記事を引用し、説明を加えながら、皆さんにも紹介したいと思います。

運動の多くの利点

誰もが知っているように、運動は私たちにとっていいものです。以下にいくつかのコメントを挙げます。

私たち医師が健康のために勧めるものがいくつもある中で、身体活動ほど益をもたらすものはありません。2015年、王立医科大学協会が発表した報告書で、運動は「妙薬(奇跡の治療法)」と呼ばれています。[1]

定期的な運動は、唯一確定された「若返りの泉」であり、しかも自由に利用できます。[2]

過去20年間に渡って行われた調査によれば、運動は心臓発作のリスクを軽減し、体重コントロールを促進し、炎症を抑制し、糖尿病や特定のがんの発症リスクを低下させ、心臓発作後の生存率を高め、気分を高揚させ、性的能力の低下を遅らせ、高齢者の自立生活期間を長くすることが分かっています。

「運動によって改善されないものは、なかなか見つかりません。」 そう語るのは、ジョンズ・ホプキンズ病院の心臓病予防医であり、同分野の研究者であるマイケル・J・ブラハです。「誰もが、運動から恩恵を受けられます。年齢を重ね、死亡リスクが高くなってからでも、運動することで寿命を伸ばすことができるのです。」 [3]

以上の抜粋文には、運動の利点がかなり多く挙げられていますが、それがすべてではありません。記事には他の医学研究の結果も言及されており、それは、運動には以下の効果があることを示しています。

次の記事は、特に興味深いものです。

運動の価値を考える時、身体的な利点に重きを置きがちです。血圧を低下させ、心臓をより健康な状態にし、体型をより魅力的なものとするといったことです。しかし、この10年間、社会科学者たちが徐々に蓄積してきた説得力のある証拠によれば、定期的な運動には別のより直接的な効用があります。それは、私たちの考え方に与える影響です。

研究結果によれば、私たちの知的脳力は身体的摂生と直結しています。中でも、何よりはっきりと結びついているのが、仕事の効率です。定期的な運動を日課に組み込んだ結果として期待できる、認知機能に関する以下の効果をよく考えてみてください。

運動しないことの危険性

運動の重要性や数多くの効用についてと同様、運動しないことで起こりうる深刻な影響も明らかになっています。

心臓病、発作、がん、2型糖尿病、肥満、関節炎などの慢性的な疾患や症状は、数々の健康問題の中でも、もっとも一般的でお金がかかるけれども、予防できるものでもあります。…

健康リスク行動とは、健康によくない行動であり、あなたにはそれを変えることができます。この4つの健康リスク行動(運動や身体活動の不足、栄養不良、喫煙、過度の飲酒)は、慢性的な疾患や症状により起こる健康不良や苦痛、早期死亡の大きな原因となっています。—「慢性疾患の概要」(アメリカ疾病予防管理センター)

運動の利点は数多く、運動しないことから生じる深刻な健康リスクも数多くあります。しかも、これは特に新しい情報ではないと認めざるを得ないというのに、なぜ多くの人はもっと、そしてより日常的に、運動しないのでしょうか。

「そのための時間をどうやって見つければいいのか」

おそらく一番の口実は、時間がないということでしょう。皆忙しいのは確かですが、より広い視野に立って、見方を変えることは助けになります。

より頻繁に運動することを妨げているものは何でしょうか。多くの人にとって、その答えは単純で、時間がないというものです。公正を期して言えば、これはもっともな説明ではあります。

しかし、この点ははっきりさせておきましょう。何かの活動のために時間がないと言う時、それが本当に意味しているのは、自分にある時間を割くほど優先的なものだと見なしていないということです。

運動を、自分のためのもの、つまり、仕事の時間を奪う個人的な道楽のように見るのではなく、身体活動は仕事の一部であると見なすべき時です。そうしないで、情報処理が遅くなり、よく物忘れをし、すぐに苛立つようになるなら、仕事の効率は落ちるし、同僚にとっても一緒に仕事しづらい人間になってしまいます。

運動をどのように日課に組み入れるにせよ、それは自分の仕事の一部だという考え方をするようになれば、そのための時間をずっと作りやすくなります。仕事を放り出しているわけではないと覚えていましょう。それどころか、仕事につぎ込む時間を確実に価値あるものとしているのです。[5]

これは非常に助けになる概念です。運動に対する見方を変えて、それは仕事の一部であると考え、よりよい仕事をするのを助けるものだと理解するなら、もっと安心してそのための時間が取れるようになることでしょう。

「運動は好きじゃない!」

時間がないことの他に、多くの人が運動をしないもう一つの理由は、単に好きではないということです。つまらないからかもしれないし、あるいは、体がなまっているので全然うまくできず、まったく楽しめないのかもしれません。そのような考え方でいるのなら、運動を嫌がるのも当然です。そこでぐずぐずして、言い訳を言い、先延ばしにしてしまうわけです。

次の抜粋文には、とても励まされました。やる気を起こさせる新しい情報や、運動をもっとやりやすくしてくれる新しい概念が含まれています。

ミシェル・シーガーは、ミシガン大学の「スポーツ、健康、活動に関する研究及び方針センター」の所長を務めています。…

直感に反しているようですが、研究の結果、減量や健康増進を目標とする人は、最小限の時間しか運動にかけない傾向のあることが分かっています。むしろ、すぐによい結果となってあらわれ、日々の生活の質を高めるようなもの(活力の増進、ストレスの軽減、友人や家族と過ごすチャンス)の方が、はるかにやる気を与えるということを、シーガー博士や他の研究者は見出してきました。

「私は身体活動を、自らを再生して元気を取り戻す方法、また、もっとも大切なものを楽しみ、それをよりよく行うことを促進するものと考えたいのです」と、シーガー博士は語ります。…

同様に重要なのは、身体活動によるセルフケアを優先事項としていいのだと考えることです。シーガー博士はこのように書いています。「他の人を助けるのに忙しいからと言って、セルフケアを優先しないなら、自分のエネルギーが補給されません。それどころか、疲れ果ててしまい、他の人を助け、物事を処理する能力に支障をきたしてしまいます。」

身体活動を優先事項とする人は、必ずしも他の人より時間があるわけではなく、ただ、そのための時間を必ず予定に組み入れるようにしています。なぜなら、それが自分の能力と日々の生活の質を向上させることを知っているからです。

シーガー博士は「セルフケアの逆説」に言及して、このように書いています。「自分のケアにエネルギーを費やせば費やすほど、他のすべてのことのためのエネルギーが増してきます。」 [6]

すべてのことに意味があり、ちりも積もれば山となる

運動を、自らを再生して元気を取り戻す手段として考えることで、私はやる気が湧き、励まされました。この記事の次の部分は、私が考えたことのない新しい概念を紹介しており、それもまた助けになりました。「すべてのことに意味があり、ちりも積もれば山となる」というものです。

推奨されている1日30分や、ほぼ毎日10分間の適度な運動を3回ではなく、シーガー博士が勧めているのは、「すべてのことに意味がある」という考え方に意識を集中することです。エレベーターの代わりに階段で行く、庭の雑草を抜く、ダンスをする、あるいは冷水機のところまで歩くことだけでもです。

「私たちの生活に存在する、体を動かすあらゆる機会は、するに値する、ちゃんとした運動と見なされるべきです」と博士は言います。[7]

「ちりも積もれば山となる」という概念については、別の人からの次の助言をよく考えてみてください。

余分の努力は皆無かほとんどなしで、体をより動かしながら仕事をするための、5つの簡単な「楽勝法」を紹介します。

朝、なるべく遠くに車を駐車する。(あるいは、できれば歩いて職場に行く。)

エレベーターではなく階段を使う。

オフィス内にいる同僚に用事がある時は、電話もメールもインスタントメッセージも使わず、歩いて話しに行く。

電話をしながら歩き回る。(私は、1回の電話で7500歩以上歩いたことがあります。)

1時間毎に自分の仕事場から離れ、5分間の休憩をとって体を動かす。[8]

きっと誰もが、普段の生活に「体を動かす」機会をもっと組み込む方法を色々と思いつくことができると思います。少し時間を取って、こういったアイデアについて考えて、実際に実行できそうな計画を立ててみましょう。徐々にでもいいので、とにかく始めることです。やり過ぎると、悲惨な結果になったり、怪我をしたりすることもあります。覚えていてほしいのですが、やっている内に楽になり、楽しくなってくるものです。

アカウンタビリティ・パートナー(自分が目標に向かって努力していることを確認してくれる人)になってくれる友人がいれば、さらに助けになります。チームスポーツに参加することを考えてみてもいいでしょう。他の人と一緒に何かをする予定を入れておくと、それを目指すので、ちゃんとやり続けやすくなります。あるいは、「何でも第一にすることは成し遂げられる」という原則に従い、朝一番に運動をしてもいいでしょう。

座り過ぎは第2の喫煙—座りがちなライフスタイルの危険性

最後に伝える情報は、私にとって目を開かされるものでした。それは、座りがちなライフスタイルがいかに危険になりうるかということです。皆さんの場合はどうか分かりませんが、私は、仕事や読書、祈り、学習もそうだし、他の人と話したり、映画を見たりなど、座っている時間が多いです。「座り過ぎは第2の喫煙」(喫煙と同じくらい健康に悪い)という言葉を聞いたことがあるかもしれません。その点についての情報を紹介します。

運転手席からオフィスチェア、そして家ではソファーと、アメリカ人はますます座っている時間が増えており、それは体に大きなダメージを与えていると、研究者たちは言います。最近、ロサンゼルス・タイムズが、メイヨー・クリニック=アリゾナ州立大学肥満対策イニシアティブ局長であり、トレッドミルデスク[ルームランナー付きのデスク]の考案者であるジェイムズ・レヴィン博士にインタビューをしています。レヴィンは、ますます座りがちになっているライフスタイルの弊害について何年にもわたって研究してきて、その結果を2つのセンテンスに要約しました。

「座りっぱなしは、喫煙より危険で、HIVより死者を増やし、パラシュート降下より危ないのです。私たちは、座り続けることで、死を招いています。」

レヴィンは、「座り過ぎは第2の喫煙」というスローガンを作ったとされていますが、そう信じているのは彼一人ではありません。研究者たちは、長時間座ったままでいることで、さまざまな種類のがんや心臓病、2型糖尿病にかかる危険性が増大するという証拠を見出し続けています。

喫煙のたとえが適切であるもう一つの理由は、運動その他のよい習慣によっても、長時間座っていることによる悪影響を覆せないということが、数々の研究結果で繰り返し明らかになっていることです。座りっぱなしは、喫煙と同様、明らかに健康に悪いことであり、リスクを最小限に抑えるには、日々座っている時間を短くする以外に方法はありません。[9]

座り過ぎが問題であることについては、数多くの情報が見つかるのですが、読んでいる内に、スタンディングデスク(立って使うデスク)の人気が急速に高まっていることを知りました。そちらに切り替えるのはいいことかもしれませんが、私は(まだ)試していません。長時間立っていることの方が座っているよりもどれほどいいのか、決定的な証拠はないようです。ただ、スタンディングデスクの益は、立って仕事することによって、たとえわずかな動きであっても、座っているよりもよく体を動かすようになることだという結論を多くの人が出しています。

研究結果によれば、座り過ぎはよくなく、それが一日中長時間続けてであればさらに悪いということです。机の前や運転席などで長時間座っていることは、害を与える恐れがあります。週に数時間ジムで過ごしたり、中程度あるいは活発な身体活動をしたりしても、リスクを著しく補うことはないそうで、解決策は、座る時間を減らし、全般的により多く体を動かすことのようです。

あなたは、「でも、毎週数回運動しているから」と思っているかもしれません。運動は確かにいいものではあるけれど、長時間座っていたことによるダメージを無にすることはできないということが、研究から分かっています。

ペニントン生物医学研究センターのマーク・ハミルトン医学博士(教授)は、メンズヘルス誌にこう語っています。「それは、喫煙する人にも、しない人にも言えます。普段から運動する人にも、しない人にも言えるのです。座ったままでいることは、それ自体がリスクファクターです。」

博士は、続けてこのように説明しています。「座り過ぎに対する解決策は、もっと運動することではありません。運動がいいことは言うまでもありませんが、平均的な人には、何時間も何時間も椅子に座りっぱなしでいることによる悪影響を緩和するほどの運動はできません。」

科学者であり、『Move Your DNA: Restore Your Health Through Natural Movement(DNAを動かす:自然な体の動きによる健康回復)』の著者であるケイティ・ボウマンも、ロイターにこのように語っています。「10時間動いていないことを、1時間の運動で帳消しにはできません。」 [10]

もう一つ、定期的に体を動かすことが鍵であることを示す記事を紹介します。

ニューヨーク州レノックスヒル病院の婦人心臓健康センター所長のスザンヌ・スタインバウム博士は、このように語っています。「座ることが多ければ多いほど、よくありません。座っている時間が長ければ、それだけ心臓の健康に対する悪影響が増します。」

スタインバウムは、30分ごとに動き回ることを勧めています。

「初めてそうする時、すぐにいい影響が出ます。私たちは、体を動かすことにもっと気を配る必要があります。」

コロンビア大学医学部の准科学研究員キース・ディアスは、こう語っています。「仕事やライフスタイルのために長時間座っている必要があるなら、一番お勧めなのは、30分ごとに休憩して体を動かすことです。私たちの研究結果は、そうするだけで死亡リスクを低下させられることを示しています。」 [11]

運動したり体を動かしたりすることは、多くの人にとって簡単ではありませんが、数多くの理由により、そうすることは大切です。ラルフ・ワルド・エマーソンが言っているように、「第一の富は健康」なのです。

自分の体の健康を大切にしないことが主な原因であれ、部分的な原因であれ、そのせいで体調が優れないなら、他のすべてが順調であっても、時間が経つにつれていくつもの問題を生み出すことがあります。そうなれば、人生の他の祝福を楽しめなくなってしまいます。健康は、意識的に投資しなくてはいけない祝福の一つです。確かに、私たちは全員、年を取っていくし、それとともに病気や健康面の課題が持ち上がることはよくあります。しかし、強く健康でいるために自分にできることはあるし、そのような時間や労力、自制という投資から益を得て、人生の質を高めることができるのです。


1 Aaron E. Carroll, “Closest Thing to a Wonder Drug? Try Exercise,” The New York Times, June 20, 2016.

2 Jane E. Brody, “Even More Reasons to Get a Move On,” The New York Times, March 2, 2010.

3 David Brown, “We all know exercise makes you live longer. But this will actually get you off the couch,” Washington Post, February 22, 2016.

4 Ron Friedman, “Regular Exercise Is Part of Your Job,” Harvard Business Review, October 3, 2014.

5 Friedman, “Regular Exercise Is Part of Your Job,” HBR, October 3, 2014.

6 Jane E. Brody, “Rethinking Exercise as a Source of Immediate Rewards,” The New York Times, July 20, 2015.

7 Brody, “Rethinking Exercise,” The New York Times, July 20, 2015.

8 Zach Arnold, “Sitting Is Killing You, But Standing Isn’t the Answer (And Neither is Exercise),” Optimize Yourself, https://optimizeyourself.me/sedentary/.

9 Diana Gerstacker, “Sitting Is the New Smoking: Ways a Sedentary Lifestyle Is Killing You,” The Active Times (Huffington Post), September 29, 2014, https://www.huffingtonpost.com/the-active-times/sitting-is-the-new-smokin_b_5890006.html.

10 “Sitting Is the New Smoking,” Start Standing (blog), July 7, 2019, https://www.startstanding.org/sitting-new-smoking/.

11 “Study: Sitting too long could lead to early death,” CNN, September 13, 2017, https://kdvr.com/2017/09/13/study-sitting-too-long-could-lead-to-early-death/.

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